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google書籍全文検索の危険性と革新性 [雑感]

数日前のニュースになりますが、気になったものがあります。googleの書籍全文検索(ブック検索、ブック・サーチ)のシステムについての記事です。

 Googleブック検索(Google Book Search)は、Googleが書籍本文をデジタル化(スキャン)し、内容を検索できるようにしたサービス。日本語版の説明によると、現在700万冊以上の書籍の全文を検索できるという。

 同サービスが著作権侵害に当たるとして、米国の著作者団体・米出版者協会(AAP)などは2005年にGoogleを提訴。Googleは著作権侵害を否定して争ったが、訴訟は昨年10月に和解に至った。米国裁判所は和解に関する公聴会を今年6月11日に開く予定で、7月以降、正式承認する見通しだ。

 和解によってGoogleは、今年1月5日以前に出版された書籍のうち、米国で市販されていない絶版書籍について、商用利用が可能になる。具体的には(1)書籍をスキャンしてデータベース化する、(2)書籍データやアクセス権を販売する、(3)各ページに広告を表示する――といったことが可能だ。

 Googleは、これで得た収益の63%を著作者に支払う。権利者への収益分配は、新たに設立する非営利団体「版権レジストリ」を通じて行う。Googleは版権レジストリの設立・運営費用として3450万ドル(約34億円)を負担する。

 また、今年5月5日以前にGoogleが無断スキャンした全書籍の著作権者に、補償金として総額4500万ドル(約44億円)以上をGoogleが支払う。書籍本文(Googleは「主要作品」と呼んでいる)について、最低60ドルを権利者に支払うとしている。

 Googleはこの和解により、「米国のユーザーが、何百万という絶版書籍を検索、閲覧、購入できるようになり、権利者も収入を得られる」とメリットを強調する。
 
「日本の書籍全文が米国Googleブック検索に? 朝刊に載った「広告」の意味」 ITmediaニュース 2月25日18時17分配信より
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090225-00000081-zdn_n-sci

これは多くの問題をはらんでいると思います。インターネットの利便性と個人の諸権利はこれまでも様々な形で対立・衝突してきました。賛同するにせよ、しないにせよ、インターネットの理念からすると、世界のあらゆるテクストのデータベース化の流れは止められないと思われます。出版業界がいかに積極的にシステム構築に参与し、そこにビジネスとしていかに係わってゆくかが今後の鍵かもしれません。

google側による「著作者への収益の63%の支払い」は、破格の扱いです。逆に言えば、googleが構想している書籍データベースとその想定利用者数が、かなりの規模のものであるのでしょう。とはいえ、そもそもこのシステムが紙媒体の新刊書にとってどの程度脅威となるものなのか、予測は立てられるものなのでしょうか。

googleの告知広告が24日に掲載された読売新聞は、インターネット版の記事に、「日本の作家びっくり!申請なければ全文が米グーグルDBに」という見出しをつけ、日本の本も対象になっている点、申請しなければデータベース化を拒絶できない点を述べた上で次の談話を載せています。

 日本文芸家協会の三田誠広副理事長は「届け出なければ権利が保障されないのはアメリカ的なやり方だ。アメリカで流通していない日本の新刊書がネット上で見られる恐れがある」と危機感を募らせる。

読売新聞 2月25日3時9分配信より
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090225-00000066-yom-soci

googleが許可なくデータベースを構築してゆくことに関して、法律的には──少なくともアメリカの法律はクリアしているそうですが、道義的な問題は十分考えられますし、感情的にも許容しがたいものがあることは確かです。とはいえ、このことの是非は、とりあえず措いておきたいと思います。当面のことで言えば、そもそもこの日本語書籍の問題は日本では実際のところそう大きな問題にならないかもしれません。この分野について暗い人間の憶測にすぎませんが、誤字なくデータベース化することがラテン文字などより面倒な(=コストのかかる)日本語書籍は一気にデータベース化されることにはならないでしょうから。将来的な展開を見据え、とりあえず、日本を含め、諸外国の書籍も最初から押さえておこうということなのでしょう。それに、このまったく新しいシステムが依拠する新しい世界観と旧来的な道義が、どのように接点をもちうるのか、もつべきなのか、ぼくには即断できそうにありません。

いずれにしても、googleが利益を見込んで開発している事業には変わりありません。そして、書籍全文検索が日本でも全面解禁されれば、ぼく自身進んで利用することは目に見えています。このシステムの被害者になることももしかしたらあるかもしれませんが、利用者という形で加害者(とまで言えないなら共犯者)にもなりえます。この問題に対して公正なジャッジを下すこと、下す立場に立つことは容易ではありません。

そこで、以下では、システム導入の問題点ではなく、システム自体の問題点を考えてみたいと思います。

* * *

デジタルカメラが登場し、印画紙に焼き付けた写真をスキャナーで読み取り、タイトルを付けて保存している人も多いと言われます。これにより、これまで写してきた写真も検索可能な電子データとなるわけですが、書籍のデータベース化はこれに比すことができるでしょう。書籍のデータベース化を世界規模で行うのであれば、インターネットが書籍に取って代わる第二段階であるのかもしれません(言うまでもなく、インターネットの登場そのものが第一段階です)。

但し、googleは「コンテンツ」を収集することはできても、その元になる本はgoogleのシステムによって自動生成されるものではありません。コピーを作ることと、オリジナルを作る(「生む」と言った方がいいかもしれません)ことはまったく違います。このシステムがいずれ巨大な全貌を現わし、それにより出版業界が廃れるようなことになれば、有能な編集者が減ってゆくことが懸念されます。過去の遺産がネット上で再生産されるだけの時代になるなんてことは極論でしょうが、出版業界とインターネットの関係がどのようになるのか注意深く見守る必要はあります。

また出版というと、何も新たに書かれたものが出版されることだけを指しません。古い本が装いを変え、あるいはなんらかの編纂が加えられ、新たな註釈が施され刊行されることも多々あります。絶版の書籍がgoogleのデータベースの中に収まり、誰もが利用できるようになると、その絶版書籍が紙媒体として再度日の目を見ることはあるのでしょうか? データベースは利用されない限り、日の目を浴びません。温故知新の精神は書籍全文検索に果たして存在しえるでしょうか?

他方、この書籍全文検索が読書のあり方に根本的な革新をもたらすことは確かです。綿密に作られた索引が付けられることで本の利用価値は、飛躍的に高まります。これが多数の本の横断的な検索に拡大するとき、その意味・恩恵は計り知れません。この検索のもっとも重要な意味は、単に「インターネット図書館」で本が読めるということではなく、人類規模の知の遺産へのアクセスが即時に可能になるというこにあり、それは究極的な理念としては、知の総体への即時のアクセスということでしょう。一冊を最初から最後までじっくり読むタイプの読書は、なお紙媒体の書籍の方が向いている一方、調査的な読みにはネット検索が圧倒的に有利なはずです(紙媒体に対するこの考え方は、いずれ旧世代の幻想にすぎなくなるのかもしれませんが・・・)。

革新の裏には常に危険がつきまとうもの。今後利用者たちがどのような選択をしていくかということなのでしょう。但し、一度、新しい道に進んでしまうと、元の道には戻れません。今、ぼくたちはひとつの分岐点に立っていると言えるでしょう。


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素浪人

偶然このブログにたどりつきました。
このニュースは見逃しておりました。

本記事の内容は、そういう時代が具体的にやってきたことを
示しており、複雑な思い半分、期待半分といったところでしょうか。

紹介してくれて、感謝です。


by 素浪人 (2009-03-01 22:41) 

lyra

禁断の果実

知の遺産のデータベース化は、果たして禁断の果実なのでしょうか。禁断であるならなおのこと、食べずにはいられないのが人間の性かもしれません。

個人的には、この検索システムがもたらす影響に一抹の不安を感じつつも、導入の際の諸問題をできうる限りクリアしてもらい、まずは試してみたいというのが正直な気持ちです。
by lyra (2009-03-02 03:38) 

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オマケ/Googleとプライバシー:GmailのリンクはPageRankを渡す?推測編【7/7】(WEB CAN 2009-04-19 22:33)

GmailのリンクはPageRankを渡すのか?という(個人的な)推測で、Gmailで送受信されるメールの内容と連動して広告が表示されているところからも、Gmailで送受信されたURLがPageRankを渡す事が不可...

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